通すだけでグリッチ系サウンドが得られる
半自動マルチエフェクタ
Glitchは、マスターテンポに同期するパターンシーケンサーと9種類のエフェクトを組み合わせたマルチエフェクタです。搭載されているエフェクトは、音響・グリッチ系の音楽でよく理想されるタイプのものばかりで、波形を細かく切り刻み、切り刻んだ波形に対して様々なデジタルエフェクト処理を行い、複雑なパターンを生み出すことができます。エイフェックスツインやスクエアプッシャー等の曲で聞かれるこれらのサウンドは、大量の音声ファイルをDAWやサンプラー、ターンテーブル上で切り刻み、更にそれをつなぎ直すという大変な作業を経て生み出される事が多いのですが、このエフェクタを利用すれば、シーケンサー上でパターンを組むだけでできるのです。なかなか無い種類のエフェクタですが、操作画面の一番下に、選択したパラメータの簡単な説明が出ますし、適当に弄れば何とかなると思います。
このソフトは、大きく分けて3つのセクションに分けられます。
まず、上から2段目のパターンシケーンサー64ステップ(4小節)のシーケンサーです。Lengthの所でシーケンサーの長さを変える事ができるので、4拍子以外の曲でも使えます。ここで、エフェクトに通す音声をどのようなパターンでスライスするか決めます。シーケンサー上に並んだ一つ一つのフレームに対し、下にある9種類から一つを選んでエフェクトをかける事ができます。スライスしたい箇所で左クリックするとフレームが区切られ、フレームの先頭を右クリックするとその直前にあるフレームと結合されます。区切り終わったら、それぞれのフレームに割り当てたいエフェクトを選びます。Chosen Effectと書いてあるところに、カラフルなボタンが並んでいます。左から、ランダム、TapeStop、Moduler、Retrigger、Shuffler、Reverser、Crushre、Gater、Delay、Stretcher、バイパスです。ランダムを選ぶと、そのフレーム上にかかるエフェクトは、後ほど設定する確率でランダムに選ばれます。これだけでパターンを組むと、予期せぬフレーズが飛び出してとても面白いです。バイパスを選べば、そのフレームにエフェクトはかかりません。適応したいエフェクトのボタンを押し、次に、適応したいフレームの先頭部分(文字が書いてあるところね)をクリックすると、そのフレームがボタンと同じ色になります。これで、そのフレームに区切られた音声には、選んだエフェクトがかかる事になります。作製したパターンは、PattrenBankに16個まで保存させる事ができます。ちなみに、このPattrenBankは、MIDIコントローラで切り替えたり、オートメーションする事ができるので、ライブでリアルタイムにパターンを切り替える事もできます。SHIFTのカーソルを動かすと、パターンを1ステップずつ左右にシフトできます。
その下の段はエフェクトセクション。各エフェクタには、マルチモードフィルタとパン、原音とのMIXバランス、ボリューム(ゲイン)が付いています。フィルターは、切れ味の違うAとBのモードがあり、Bではレゾナンスが発振します。エフェクタの上部には、フィルタの動作確率、Solo、グローバルの3つのボタンが付いています。
フィルタの動作確率は、上のシーケンサーでランダムにしたフレームにおいて、そのエフェクトが選択される確率を表します。マウスのドラッグで確率を上下させてください。
Soloボタンを押すと、そのエフェクトのみが鳴るようになります。エフェクトごとに設定を追い込みたい時に便利です。
グローバルボタンを押すと、Glitchに入力された音は、まずそのエフェクタを必ず通ってから、シーケンサで選択したエフェクタに入力されます。全体にかけたいエフェクタは、このボタンを押しましょう。
さらに、エフェクタの名前を押すと、エフェクトのパラメータがランダムに設定しなおされます。時々思わぬ設定が飛び出して面白いです。では、それぞれのエフェクトの説明を。
TapeStopは、ターンテーブルをストップさせる時の効果を再現します。SlowDown(音が止まる速さ)とSpeedUp(元のスピードに戻る早さ)を早くすると、スクラッチみたいになります。Delayで、SlowDownが始まるまでの時間を遅らせる事ができます。右いっぱいに回すとテープが最後まで止まりません。
Modulerは音をサイン波で変調します。いわゆる、リングモジュレータですね。Frequencyの値によって普通のトレモロからFM変調ばりの過激なノイズまで変化します。変調信号のサイン波そのものをミックスする事もできますし、変調信号のサイン波を更にFM変調するという、気が狂ったような事もできます。
Retriggerは、フレームの最初に入力された音を、CDが音飛びした時みたいにひたすら繰り返します。Speedで繰り返すスピードを、Envelopeで、繰り返させる音の長さを決めます。また、S,changeとPitchを回すと、だんだんスピードが速くなったり、だんだんピッチが上がっていくフレーズも作れます。
Shufflerは、フレーム内の音声をランダムに切り刻み、ランダムに再生します。切り刻むサイズの上限と下限は、MinimumとMaximumで指定します。Repeatで、同じ波形が繰り返される確率を変える事ができます。
Reverserは、Modeノブを回す事で、LeftとRightで指定した区間に対して3種類の効果を出せます。PingPonモードの時は、指定した区間で再生と逆再生を繰り返します。Reverse1モードでは、指定した区間を一回再生し、その後逆再生を繰り返します。Reverse2モードは、単純な逆再生です。
Crushreは、低ビットでデジタル録音した音を再現するビットクラッシャーです。Amountで、サンプルレートを、Quantizeで量子化ビット数を下げる事ができます。
Gaterは、一定の周期でボリュームのオンオフを繰り返すゲートです。Speedでオンオフの切り替えスピードを、Envelopeで音が出続ける時間を、Volumeで、ゲートのかかり具合を決めます。
Delayは、見たままデジタルディレイです。ディレイ時間は、0.1msから0.25小節まで延ばせます。ディレイタイム0.1msって、フランジャー並じゃないっすか(汗)
Stretcherは、タイムストレッチです。音声をグレインという細かい区間に分け、それによってピッチを保ったまま再生速度を遅くする事ができます。Divisorでグレインの細かさを、Amountで再生速度を、X-Fadeでストレッチの自然さを調整できます。Amountを右に回し、再生速度を遅くしていくと、ドローンっぽい音になります。DiviserとX-fadeの設定次第で、自然なタイムストレッチからロボットみたいな劣化サウンドまで可能です。
じゃ、一番上の段のマスターコントロール。
ここでは、Glitch全体に適応させる設定を行います。
amountは、ランダムに設定したフレームのときに、そのフレームの音がバイパスされる確率を設定できます。左に回すほど、エフェクトのかからないフレームが増えます。
seedでは、ランダム設定の際に使う乱数の種を変更するらしいです。ランダムパートの雰囲気が気に入らない時に変えればいいのかな? めったに弄らなくていいでしょう。
De-clickは、フレームが切り替わる際の音の繋がりを自然にするつまみです。左に回すと、フレームが切り替わる時に音がブッツリ切れます。右に回すほど、切り替わる際の音の変化が滑らかになります。好みで使い分けましょう。
StepEnvelopeでは、各フレームの音の長さを変更します。左のつまみを左に回すほど、パターンゲートみたいに音がブツ切れになります。右のつまみで、音が切れるときのシャープさが変わります。
更に、マスターエフェクトとして、オーバードライブとフィルタが用意されています。オーバードライブは、デジタルに過激にゆがみます。フィルタは、各エフェクタに搭載されているものと同じですね。最後は、原音とのミックスバランス、ボリュームです。
以上で、主なパラメータを紹介し終わりました。あー疲れた・・・
とはいえ、こういったパラメータの機能にこだわらづ、適当につまみを弄りながら音を鳴らしたほうが、面白いサウンドができるかもです(ヲ
また、作成した16のシーケンス、各エフェクトのソロ、グローバルのOnとOffは、MIDIのノートナンバーで制御可能です(C4-D#5がパターンバンクの1-16に対応、C6-G#6が各々のソロボタン、C7-G#7が各々のグローバルボタンに対応)。キーボードとGlitchのポート番号を合わせるか、FLではMIDIOutってプラグインを介してGlitchとシーケンサを繋いでやると、鍵盤やFLのシーケンサでパターンを制御できます。これを使えば、1小節のループから一曲分のフレーズを得ることができます。出したいフレーズが決まっているなら、これは有効な手段です。
複雑な処理を行うわりにはその動作は軽快で、複数台起動して複数のトラックに並列・直列に使用する事も可能です。IDM、音響系の音楽をやっている方、自分のトラックに今までに無いフレーズを取り入れたい方、是非お試しあれ。